室屋義秀、AIR RACE X第2戦を制しシリーズトップに浮上! パトリック・デビッドソンが初の決勝進出

予選結果:室屋選手がトップ、エマ・マクドナルド選手が躍進

Race 1を終え、30ポイントでシリーズチャンピオン争いのトップに立ったマット・ホール選手(オーストラリア)を、4ポイント差の26ポイントで室屋義秀選手(日本)が追う展開で迎えたRace 2リモートラウンド。8月30日〜9月8日に設定された予選期間で、トップに立ったのは室屋選手。2位には南アフリカのパトリック・デビッドソン選手が入り、3位にホール選手がつけた。

特筆すべきは、予選4位につけたオーストラリアのエマ・マクドナルド選手だ。これまでエアレース未経験だったにも関わらず、AIR RACE XデビューだったRace 1の予選5位、決勝5位に続き好タイムをマークしている。

彼女が使用するレース機は、師匠であるホール選手が普段エアショーで乗っているMXS-R。2016年まではレッドブル・エアレースでホール選手が使っていた機体とはいえ、レース専用に仕立てられている訳ではない中、他の選手と互角以上のタイムを叩き出しているのは、彼女の非凡な才能を表しているといえるだろう。

明暗を分けたのは、チェコのマルティン・ソンカ選手だ。Race 1では予選3位と好調なスタートを切ったものの、決勝の初戦である準々決勝で敗退して7位に終わり、巻き返しを図りたいところだったが、まさかの予選最下位に沈んでしまった。

準々決勝:ヨーロッパ勢が揃って敗退

予選の上位と下位とが対戦する準々決勝、組み合わせはどれも「ヨーロッパ勢対それ以外」というカードとなった。予選下位にヨーロッパ勢が並んだためだが、対戦でも揃ってヨーロッパ勢が敗退してしまう。順当といえば順当という結果なのだが、番狂せを期待したファンにしてみれば拍子抜け、といったところかもしれない。

特にシーズンランキング下位から大逆転でチャンピオンを狙う実力者ソンカ選手にとって、室屋選手との対戦は願ってもない好機といえる展開。それだけに、予選の不調を振り払う好タイムでの勝負を見られなかったのは残念だった。

準々決勝でトップタイムをマークしたのは、予選2位のデビッドソン選手で60秒360。対戦相手のミカ・ブラジョー選手(フランス)に4秒以上の大差をつける楽勝で、予選からの好調を見せつける結果となった。

デビッドソン選手はレッドブル・エアレースを経験しているパイロットの中で、ただ1人下位のチャレンジャークラスからAIR RACE Xに参戦している。今回から新たにレーストラック攻略を担うタクティシャン(戦術家)をチームに迎えたといい、その効果がさっそく出ているようだ。

準決勝A:ホール選手とデビッドソン選手、わずか0.019秒差の接戦

準決勝は、シーズンランキング上位の実力者と新鋭との対決になった。南半球に位置する国同士のホール選手とデビッドソン選手が対戦した準決勝Aは、スタートゲートへの進入角や折り返しのターン方法など、それぞれ異なるアプローチながら、付かず離れずの大接戦となった。

攻略法が複数ある、というトラックレイアウト設計の奥深さを感じさせるレースは、両者ともほぼ同時にゴール。気象条件の違いによるハンデキャップ(タイム補正)を含まない状況では、わずか0秒019差という際どい勝負だったが、ハンデキャップを加味するとデビッドソン選手59秒791、ホール選手60秒715となり、デビッドソン選手が初の決勝進出を決めた。

準決勝B:マクドナルド選手、師匠ホール選手の同期室屋選手に挑むも敗北

ルーキーのマクドナルド選手が、経験豊富な室屋選手に挑戦するという準決勝B。マクドナルド選手の師匠であるホール選手は、室屋選手とレッドブル・エアレースの同期生ということもあり、文字通り世代間の戦いと見ることもできる。

レースは、序盤のスラロームセクションを滑らかなラインで飛ぶ室屋選手に対し、マクドナルド選手は徐々に遅れをとっていく。しかし、そのままで終わらないのがマクドナルド選手の非凡なところだ。ゲート6からゲート8にかけ、差を詰めてきた。

それでも室屋選手のフライトは乱れない。ゲート9への折り返しをタイトなターンでまとめ、再びリードを広げた。続くゴールへのハイターンでも美しい弧を描き、全体的にスムーズで無駄のない動きを見せた室屋選手は60秒913でフィニッシュ。62秒827だったマクドナルド選手に対し、格の違いを見せつける勝利となった。

決勝戦:室屋選手が驚異のスーパーラップで優勝、デビッドソン選手も自己最速タイムをマーク

予選の1位と2位が、順当に速さを見せて勝ち上がってきた決勝。これまでの戦いぶりを見ると、デビッドソン選手はただ1人、予選から60秒台から59秒台のタイムをマークしている。室屋選手のタイムは安定しているものの、勝利するにはもう一段レベルの高い速さを必要とするように感じられた。

ハンデキャップのタイム補正値は室屋選手の方が有利で、デビッドソン選手は0秒175速いタイムをマークしなければ勝利できない。これまで同様、ゲート2へ直線的に向かう角度でスタートゲートを通過したデビッドソン選手だったが、室屋選手はその先のゲート3までを最短距離で飛び抜けるラインを選択し、ゲート2をイン側ギリギリに通過する。

スラロームセクションをクリアした時点で0秒282先行し、そのままの流れでゲート5へ折り返した室屋選手に対し、デビッドソン選手はターンのタイミングがわずかに遅れてしまう。しかもやや高くターンしてしまったために大回りとなり、ゲート5通過時のタイム差は0秒976と大きく開いてしまった。

途中でデビッドソン選手が挽回し、差を詰める場面はあったものの、全体的に危なげないペースで飛んだ室屋選手が先にゴール。タイムは驚異の57秒688というスーパーラップをマークした。デビッドソン選手も58秒607と自己最速だったのだが、その遥か上をいく結果となったのだった。

シリーズランキング:室屋選手がトップに、デビッドソン選手が3位に浮上

Race 2を制した室屋選手は予選トップの8ポイントを合わせ、合計33ポイントを積み増して59ポイントとなり、シリーズチャンピオン争いのトップに立った。2位にはRace 1の勝者であり、今回も予選3位(3ポイント)、決勝3位(15ポイント)をマークしたホール選手が48ポイントで続く。3位には今回予選2位(5ポイント)と決勝2位(18ポイント)となったデビッドソン選手が、Race 1終了時点の4位から浮上した。

ほかにも、これまでエアレースの経験が全くなかったルーキーのマクドナルド選手がランキング4位と健闘しており、目の離せない存在になりつつある。このAIR RACE Xのフォーマットが、これまでとは違った特徴を持っているということを表しているのかもしれない。

次戦予告:シリーズ最終戦は渋谷のデジタルラウンドで決着

初めて「シリーズ」として開催される、2024年のAIR RACE X。最終のRace 3は再び渋谷の街を舞台にしたデジタルラウンドとなる。街中にどのようなトラックが設定されるのかという楽しみと同時に、シリーズチャンピオンの行方も気になるところだ。