最高時速400km、最大重力加速度12G、計測単位は0.001秒。2026年シリーズの開幕を飾る第1戦のレーストラックには、エアレースの本質が凝縮されています。
本ページでは、Race 1のコース構造と、レースを観戦するうえで押さえておきたいポイントを解説します。
第1戦のコースは、5か所のゲート(A〜E)で構成されます。すべてが2個のマーカーで作られたダブルゲートで、マーカーの総数は10個。これら5か所のゲートを、選手は決められた順序で合計15回通過します。
ゲートの配置は、A(スタート/フィニッシュゲート)を起点として、B、C、D、Eと200m間隔でジグザグ状に並んでいます。
スタートゲートを時速370km(200ノット)で通過した機体は、最高時速400kmへ加速しながら、定められた順序でゲートを縫っていきます。
なお、AIR RACE Xのマルチロケーションレースでは従来のエアレースで使われる大型のパイロン(空気で膨らませた柱)ではなく、地面に設置されたマーカーが基準として用いられます。マーカーとマーカーの間に画定される空間がゲートとなり、機体はその間を抜けていきます。
ジグザグに並んだ5か所のゲートを、ただ順番に往復するだけ ― そう思われがちですが、コースはまったく違います。
各ゲートの通過順は以下のとおりです。
ゲートの通過順は変則的で、同じ場所を異なる方向から何度もくぐり抜けます。
しかも、パイロットはただ通過するだけではありません。ゲートごとに最適なラインは異なり、次のゲートを見据えて微調整を重ねながら飛行します。一見シンプルに見えても、ベストタイムを出すためには多くの判断が積み重なっているコース ― パイロットごとに異なるライン取りにも、ぜひ注目してください。
エアレースは、最速のタイムを記録した選手が必ずしも勝つわけではありません。飛行タイムに、ミスを犯した際に付与されるペナルティ秒数を加算した合計が、最終結果となります。
マーカー接触(パイロンヒット)
機体が規定のコース幅を外れたとき。※さらに大きく外れると一発で「失格(DNF)」
姿勢不良・高度不足
規定の高度を守れなかったり、ゲート通過時に機首を上げすぎたり(クライミングペナルティ)したとき。またはターンの頂点で規定の高さに届かなかったとき(インコレクト・ターン
スモーク不足
フライト中に継続してスモークを出さなかったとき
そして計測単位は0.001秒。1000分の1秒の差で、順位が決まります。
速さを追ってコースを攻めるとマーカーに触れる。慎重に飛べばタイムを失う——速度と精度、その境界線を誰よりも攻めきった選手が、表彰台に立ちます。
第1戦のコース最大の見どころは、3回組み込まれた「ハイターン(High Turn)」 です。水平に飛行する機体が機首を引き起こし、真上へ駆け上がり、頂点で反転して降りてくる——通称バーティカルターンと呼ばれる機動です。真っ青な空に機体が駆け上がっていくこの豪快なアクションが、第1戦では3回繰り返されます。
ただし、ただ上昇すればよいというものではありません。ここには、ふたつの厳しい制約が課されています。
タイミング
引き起こしが早すぎればゲート通過時の姿勢違反(上昇角超過)でペナルティとなり、遅すぎればタイムロスに繋がります。さらにターン頂点で規定高度(500ft)に到達できなくてもペナルティとなります。
Gコントロール
機首を引き起こす瞬間、機体とパイロットには強烈なG(重力加速度)がかかります。12Gを超えれば即座にDNF(失格)となり、そのヒートは敗北となる限界領域です。最大限のGをかけつつ、決して12Gは超えない繊細なコントロールがタイムを縮める唯一の道です。
第1戦のコースで特に注目したいのは、「豪快なアクションの裏にある精密さ」です。
瞬きより短い時間でのハイターンへの進入タイミングの判断と、自身の身体感覚を計器のように扱う12GギリギリのGコントロールこそが勝敗を分けます。
コースのターゲットタイムは61秒。その短い時間に、速度と精度、攻めと守りといった、互いに矛盾する要素が幾重にも織り込まれています。
第1戦の放送は、6月28日(日)。大会公式YouTubeチャンネルで全世界へ配信予定です。