12 AUG 2026
NEWAIR RACE Xのコースは、レースごとに姿を変えます。第1戦はハイターンを軸にしたコース。第2戦はローターンを連ね、持続するGとの戦いを強いるコースでした。
そして第3戦のテーマは、速度そのものです。
図で見れば、5か所のゲートが並んでいるだけ。しかし、時速400kmで飛ぶレース機は、1秒におよそ100m進みます。判断も、操作も、そのスピードの上で行われる。シンプルに見える配置図の裏側には、驚くほど密度の高い時間が流れています。
第3戦のコースには、旋回を挟まない800mのロングストレートが用意されています。加速しきった機体は、その速度のままハイターンへ突入する。そこで待っているのは、12Gの制限とのせめぎ合いです。第3戦の特徴は、速さがそのまま難しさに変わることにあります。
コースを構成するのは、5か所のゲート(A〜E)です。A(スタート/フィニッシュゲート)を起点に、B・C・D・Eが200m間隔でジグザグ状に並び、AからEまでの全長(距離)は800m。選手はこの5か所を合計15回通過します。
第3戦の性格を決めているのは、その5か所をどの順序で結び、どこに旋回を置いたかです。
ハイターンが2回、ローターンが2回。第1戦は縦の機動に、第2戦は横の機動に偏っていましたが、第3戦は両方を等しく要求します。どちらか一方が得意なだけでは、勝ちきれません。
マーカー方式やゲートの成り立ちは第1戦の解説を、ハイターン/ローターンの違いは第2戦の解説をご覧ください。
| 通過順 | ゲート | 進入方向 | 旋回の種類 |
|---|---|---|---|
| 1(Start) | A | 0 | |
| 2 | C | 0 | |
| 3 | D | 0 | |
| 4 | E | 0 | High Turn |
| 5 | B | 180 | |
| 6 | A | 180 | |
| 7 | C | 0 | |
| 8 | D | 0 | Low Turn |
| 9 | B | 180 | |
| 10 | A | 180 | Low Turn |
| 11 | C | 0 | |
| 12 | E | 0 | High Turn |
| 13 | C | 180 | |
| 14 | B | 180 | |
| 15(Finish) | A | 180 |
シミュレーション上の想定タイムは62.7秒。その間に通過するゲートは15回――平均すれば、4秒に1回です。ゲートとゲートの間隔200mは、わずか2秒。しかも同じ場所を、異なる方向から何度もくぐり抜けます。
その数秒のあいだに、パイロットは何をしているのか。
空中にゲートの目印はありません。地上のマーカーだけを頼りに、見えない窓の位置を頭の中で再構築する。そこへ向かう機首の角度と高度を合わせる。同時に、次の旋回に必要な速度とラインを、すでに作り始めている。そして旋回に入れば、最大12Gの負荷が身体を押さえつけます。
高いGに耐えながら、ペナルティを踏まない精密さを保ち、なお最速のラインを外さない。 この3つを飛行中ずっと同時進行させる――一見シンプルな配置図の裏側にあるのは、そういう世界です。
スタート直後の直線800m。旋回を挟まないこの区間で、スタートゲートの速度制限から解放された機体は時速400km近くまで一気に加速します。そしてその速度のまま突入するのが、G4のハイターンです。
ここでパイロットに課されるのは、ハイターンに必要な急激な垂直方向への引き起こしによるオーバーGを出さないこと。旋回にかかるGは、速度の二乗に比例して増えます。同じ弧を描こうとすれば、速く入るほど激しいGが襲いかかる。12Gを一度でも超えれば、その瞬間に失格です。
かといって、Gを恐れて緩やかに引き起こせば、軌跡は大きく膨らみ、タイムを失いかねない。
400km近い速度のまま、Gの限界に触れず、僅かなタイミングを逃さず、しかし限界の手前まで攻めきる。計器を確認する余裕はありません。判断を支えるのは、パイロット自身の身体感覚だけです。人間の限界に迫る一瞬が、ここにあります。
G4を抜けた機体は、コースを一気に駆け下りてG6へ。ここで待っているのが、低空での折り返しです。そしてコース中盤のG10では、ローターン。最低高度250FTをクリアしながらの攻防が展開されます。250FTを割ればペナルティ、制限Gを超えれば失格。上下ふたつの限界に、同時に挟まれる区間です。
しかも、ここで速度を落とすわけにはいきません。制限Gのギリギリまで攻めながら、なお、可能な限り最速で駆け抜ける――求められるのは、力任せではない、繊細な操縦です。
わずかなラインの違いが、コンマ1秒を争う勝敗を決める。第3戦の勝者は、その境界線を誰よりも攻めきった選手です。
AIR RACE X 2026 第3戦は、8月16日(日)21時より、大会公式YouTubeチャンネルにて配信します。